弁護士コラム:後遺症を残さなかった方や非該当の方へ(令和5年10月17日更新)
交通事故にあってある程度の期間が過ぎますと,保険会社からそろそろ症状固定にして後遺障害診断書を書いてもらってくださいとか,そろそろ治療をやめてくださいと言われることが多くなります。保険会社によってはいきなり治療費の支払いを打ち切ってくる場合もあります。
このような状況に遭遇したとき,まずはお医者様とどのように対処したらよいか,相談してください。その結果継続的に治療が必要ということであれば,健康保険を使って通院をすることは可能です。
問題は治療を断念して治癒の扱いとなった場合や,保険会社から言われたとおりに後遺障害の申請をして非該当の結果になった場合です。これが今回のコラムの本題であり,治癒の扱いになった場合や,非該当の結果を受け入れて保険会社と示談交渉を行う場合の被害者のみなさまの対応についてです。なお,非該当の結果に対しては異議申立てや裁判などで争うことは可能であり,この場合は弁護士を依頼して対応されることをお勧めします。
交通事故の被害者のみなさまの被害回復は加害者に対する損害賠償請求の方法によることになりますが,考え方としては,後遺障害に対する賠償と後遺障害以外の損害に対する賠償の2つに分けて考えるのが普通です。みなさまは,後遺症を残さなかったり,あるいは非該当の結果を受け入れたわけですから,後遺障害以外の損害について示談交渉を行うことになります。損害の項目としては、治療費や通院交通費,入院した場合は入院雑費,休業損害,傷害を受けたこと及び入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する慰謝料が主な損害の項目となりますが,このうち休業損害と慰謝料が金額としては大きく,示談交渉を行う際の大きな争点となります。
私の経験では,保険会社が提示してくる金額は、弁護士が入らない場合は適正金額の約半分に過ぎません。例えば慰謝料は仮にむち打ち症で半年程度通院した場合の金額が約90万円であるのに対し,保険会社が提示してくる金額は50万円を切るのが普通です。また,主婦の場合の休業損害についても,一日あたりの金額は裁判の基準の約半分,しかも通院日数を乗じての数字になることが多いですから,本来いただける金額の3分の1程度にとどまる場合も珍しくありません。ですから,後遺障害の認定がない場合であっても,弁護士に相談依頼して適切な賠償をいただくことが必要です。
弁護士を依頼した場合の費用についてですが,弁護士特約がある場合はこれにより費用の全部又は大部分がまかなわれことになる場合がほとんどです。弁護士特約がない場合でも,事務所によってということにはなりますが,当事務所の場合,着手金を準備することなく,回収した金額からあらかじめ弁護士と約束した金額を弁護士の報酬として清算する形になりますので,ほとんどの場合増えた金額の範囲内にとどまりますし,交渉の精神的負担もなくなります。したがって,金額が小さいからといって遠慮しないで,弁護士に相談依頼してください。
(執筆者)弁護士 菅野 芳人
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